23にして初めて人間失格を読んだ

どこかで見た「小中高生の読んでる本ランキング」みたいなやつで、太宰治の「人間失格」が中学生女子の読んでる本にランクインしていた。そういえば自分は人間失格を通ってきていない。たぶん思春期のうちに読んでおくべきだったんだろうな。ふらっと寄った本屋でそんなことを考え、買うことにした。もはや本コーナーが猫の額くらいしかない近所の下品なTSUTAYAで「この人を見よ」と、「もものかんづめ」と一緒に。

存外に薄い本だったのでサクッと読めた。せいぜい2,3日程度で読んだ。だが、正直言って何も心に触れるところがなかった。何というか、自分と全く別世界に生きる生物の思考回路をただ淡々と覗いている感じ。主観で書かれているが全く移入するところはなかった。やはり中学生のうちに読んでおくべきものだったのだろうか。今になってあの時の感性を取り返そうとしても遅かったのだろうか。そう思ってTwitterで感想を漁ってみると、「メンタルが病んでる時に読むと引き込まれる」とかそういう感想が多数を占めていた。

いや、あれで引き込まれるってどんな人間なんだ。津軽のような本州の端とはいえ豪農の家に生まれ、長兄ではないとはいえ恵まれた家庭に育ち、学校にほとんど行かなくても学業優秀、女にはモテてモテてしょうがない。こんな人間のどこに共感するところがあるのか全く理解不能だ。全編に渡って長々と自虐風自慢を聞かされたような気分だ。それも恵まれた人間の不幸自慢なんだから聞くに堪えない。

ただ、一つだけ学んだことがある。ここまで恵まれた環境、ステータスを持って生まれた人間であっても、メンタルが弱いとどうにもならないことだ。メンタルの強弱が先天的なものなのかは分からないが(少なくとも私はそう思っている)、私はメンタル薄弱で生まれなくて良かった。私はこの本を読んでも何も感じないし、たとえメンタルが弱った時に読んだとして全く同じ感想だろう。親に感謝したい。ありがとう。年末には洒落たお土産でも持って実家に帰ることにする。

たぶん二度とこの本を開くことはない。